池尻大橋の駅近く、目黒川沿いに建つ小児科クリニックである。
集合住宅の1Fテナント部分をリノベーションして医療施設につくり変えた。
病院に恐怖心を抱いてしまう小さな子供たちは少なくない。
その心理的バリアを少しでも取り除くべく、「病院っぽさ」を感じさせない空間づくりを心がけた。
とくに、エントランスを兼ねる待合ゾーンでは、レッドシダーシングル葺きの外壁仕上げを内部までそのまま連続させ、床仕上げも屋外仕様のピンコロタイルを用いることで、そこが街側に属しているような感覚を演出している。
敏感な子供たちが異質な場所へ入り込んでしまったと感じさせない工夫でもある。
受付カウンターの形状から壁出隅部分の面取りに至るまで、各所に大小のアール(R900〜10)を用いているのは、子供の手に多く触れることを考慮してのことである。
素材や色についてもメンテナンス性を確保しつつ、可能な限り柔らかいものを選択するようにした。
また、院長からのリクエストのなかには、2部屋の隔離室と専属の独立した出入口というものがあった。
各種感染症の院内感染を予防するための施策である。
設計を開始したのは2019年の11月ごろだったので、COVID-19が世界的に蔓延する前ということになる。
テナントの面積や形状とのバランスを鑑み、一時は縮小や不採用も検討したが、結果として今の時代に求められる機能を持つことができた。
接触可能性のある来訪者含め、一般患者と一切接触することなく受付から支払いまでを完結することができる。
工事中、通りがかりの人々から「何ができるんですか。」とよく声をかけられた。
なかでも「お菓子屋さんみたいですね。」という一言には勇気を与えられた。
地域に根ざす小児科クリニックとして、それこそ近所にお菓子を買いに行くような気軽さで立ち寄れる施設となることを願っている。
延べ面積
91.50㎡
竣工
2020年8月
内装設計監理
佐野健太建築設計事務所
担当
佐野健太
梯朔太郎
サイン計画
阿部航太事務所
担当
阿部航太
内装施工
ルーヴィス
担当
重久萌
佐藤真生子