江戸の二大庭園「六義園」のほど近く、古くからの住宅地に建つバレエスタジオ兼住宅である。往時には多くの植木店でにぎわっていた。鳥の目で東京を俯瞰すれば、この界隈が都内でも有数の大緑地帯であることに気づかされる。翻って現在ではこのエリアでもミニ開発が進んでおり、とってつけたような緑化に本来の豊かな緑空間が取って代わられつつある。
そこで、私たちはこの場所が街の小さなオアシスとなれるよう、緑を抱え込むような建築をつくりたいと考えた。建主はこの街で生まれ育ち、教室もこの街とずっと共にあり続ける。街にたいしてささやかな恩返しとなるような建設の行為でありたいとおもった。まずはスタジオの床面積を最大限確保し、大きな跳躍に十分な高さとして有効を4.2mに設定した。床は地面から切り離され、上下それぞれ小さなボリュームが積み重なる。下層はガレージとスタジオの付属機能、上層は少人数での暮らしを想定したコンパクトな住宅である。これらボリュームどうしのズレが空隙を生み、軒下やテラスとなってグリーンをふんだんに取り込んでいる。
建主が主催するバレエ教室では一貫して公演(発表会)をたいせつにしてきた。建築側でもこの精神を受け継ぎ、劇場を一つのモデルとして考えてみることにする。北側開口をプロセニアム、テキスタイルを緞帳と見立てればスタジオは舞台へと変わり、外の都市は客席となって広がっていく。ガレージの天井高を限界まで抑え舞台レベルを道路面に近づけることで街との距離を縮めようと試みた。
住居部分はさながらペントハウスの様相を呈している。テラスが周りをとり囲み室内の床とシームレスにつながっていく。斜線制限を回避しながら大胆に削ぎ落とされた屋根形状は、そのままインテリアに勾配天井となってあらわれ、水廻りと収納を収めたボックスの上に寝室、残りはすべて食事と団欒のスペースという極めてシンプルな構成である。
海外から訪れた構造家が内部からの風景を評し、極めて東京的だとふと呟いたことがある。街との連続性をたいせつにしていたことからもこの建築を「東京のバレエハウス」と名付けることにした。
用途
バレエスタジオ併用住宅
構造
鉄骨造
規模
地上4階、地下0階建て
敷地面積
166.99㎡
延べ面積
283.36㎡
竣工
2024年9月
設計監理
佐野健太建築設計事務所
・担当
佐野健太、梯朔太郎、山本麗奈
構造設計
yasuhirokaneda STRUCTURE
・担当
金田泰裕、青山健太
構造設計(協同設計)
BEYOND ENGINEERING
・担当
木村洋介
照明設計
岡安泉照明設計事務所
・担当
岡安泉
テキスタイルデザイン
安東陽子デザイン
・担当
安東陽子、松井萌真
ファサードエンジニアリング
GLASS MASTERS&PARTNERS
・担当
賀井伸一郎
施工(建築)
建匠社