佐野健太建築設計事務所 Kenta SANO & Associates, Architects

RICKA KATSUURA Chiba, JAPAN 2025

勝浦といえば海辺のリゾートを想起しがちだが、本計画地は海岸線から距離を置いた竹林の里山にある。夷隅川がつくる緩やかな地形に沿って集落と里山が点在するこの一帯は、観光拠点から外れた立地でありながら、近年「一棟貸し」の宿泊施設が林立してきていることが分かった。東京からの近さを持ちつつ、アクセスが自家用車中心である点が滞在者の行動を限定し、都会の喧騒から切り離された静謐な時間を獲得できる。結果として、風景そのものを資源化したプライベートヴィラが集積する、いわば宿泊施設の激戦地となっている。

コロナ禍以降、旅の価値は名所を巡る消費型から、滞在を通じた体験・関係性の編集へと重心を移しつつある。住まいの延長として過ごしながら、環境の差異によって非日常を立ち上げる「もう一つの家」として、一棟貸しは成熟してきた。一方で周辺の多くが一日一組・最小単位を前提としているのに対し、RICKA KATSUURAでは複数家族や友人グループ、さらにはワーケーション利用までを射程に、最大12人が同時滞在できる施設として再定義した。

このスケールを支えるのが、屋敷地としての広い敷地と、点在する既存建物群である。建物が離散的に建っている状況は、滞在者それぞれのプライバシーを担保しながら、外部空間を介して緩やかな共在を誘発する。ここでは「完全な個」へ閉じるヴィラではなく、必要に応じて集い、離れ、働き、休むことのできる滞在像を目指し、「コミュニティヴィラ」というコンセプトを提示した。

滞在中の人数変動や過ごし方の多様性を前提に、動線と居場所のスタディを進めるなかで新設したのがサウナ棟である。サウナは体験コンテンツとしての訴求力が高いが、本計画で重視したのはその配置により外部空間の質を更新する点にある。母屋・蔵とともに中庭を囲むようにサウナを据えることで、従来ひとまとまりだった庭を、プール、たき火場、中庭といった複数のゾーンへと緩やかに分節。滞在者が目的を変えながら回遊できる輪郭を与え、施設全体に多様な居場所を生成した。

また、滞在者が一堂に会する母屋は、中庭との関係を再編集することを主題に既存間取りを再構成した。「一つ屋根の下で過ごす」という体験の核として、築約100年の古民家が持つ小屋組のスケール感を積極的に露出させ、建物固有の魅力が滞在体験の骨格となるよう意図している。改修によって新しさを付加するのではなく、既存の時間を読み替え、滞在・交流・仕事・休息が共存する風景を立ち上げること——RICKA KATSUURAは、里山における一棟貸し宿泊の次の位相として、その可能性を検証する試みである。

  • 用途

    一棟貸切ヴィラ

  • 構造

    木造

  • 規模

    地上1階(一部地上2階)、地下0階建て

  • 敷地面積

    2,350.41㎡

  • 延べ面積

    325.00㎡

  • 竣工

    2025年3月

  • 設計監理

    佐野健太建築設計事務所

  • ・担当

    佐野健太、梯朔太郎

  • 構造設計

    浜田英明建築構造設計

  • ・担当

    浜田英明、山嵜大輔

  • 照明設計

    杉尾篤照明設計事務所

  • ・担当

    杉尾篤

  • サイン計画

    station

  • ・担当

    三宅高弘

  • 施工(建築)

    協和ハウジング

  • 施工(景観)

    グランド・ガーデン